「一期一会」

2018年1月、僕は在宅医療の講演会に参加しました。そして、その講演会をきっかけに演者の先生との繋がりができて、その後に在宅医療の道を志すことになったのです。その先生の言葉をきっかけに気づいたことがありました(2019年1月の記事になります。その当時は脳神経外科医として病院に勤務していました)。そして、そのことは、それ以来、僕が医療を行うときに大切にしていることになりました。
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「永野先生、僕はね、あるときから教科書を読まないって決めたんだよ」
「そしてね、患者さんからすべて教えてもらうことにしたんだ」

在宅緩和ケアに長年たずさわっておられる尊敬する大先輩の言葉です。

1年前くらいに一緒にお食事をしながらお話しを伺うことがあってとっさにこの言葉をメモした記憶があります。

そして先日、その日の仕事を終えて一日を振り返っているときにこの言葉が甦ってきました。

「患者さんからすべて教えてもらうことにしたんだ」

さて、いまの僕はどうなのだろう。もっと患者さんから教わることがあるではないだろうか。
今の仕事にすっかり慣れきってしまっていてその意欲が少なくなっているのではないか。

そして、患者さんが本当に僕へ伝えたいメッセージを受け取れているのだろうか。
そして、僕が患者さんに伝えたい本当の想いは伝わっているのだろうか。

そんなことを考えているうちに『一期一会』という私の好きな言葉が浮かんできました。

もしかして『患者さんとの出会いは一期一会、その偶然の出会いを大切に。』

と大先輩は教えてくれていたのかもしれないと思いました。

そして、患者さんが教えてくれることは患者さんに個性があるように、千差万別、十人十色。

だとしたら患者さんが教えてくれることよりも自分がどの患者さんにも伝えたい本当の想いを突き詰めた方がよいのではないだろうか。

と考えるようになり、それは『安心感』ということがはっきりとわかりました。

「病気が見つかって不安」「再発が心配」「痛くて動けない」「あとどれくらい生きられるの」

など、さまざまな不安や心配や悩みを持っている患者さんに『安心感』をもってもらいたい。

そうするにはどうしたらいいか、つまり『安心感』を与えてくれる医師は、

・どんなあり方で(BE)
・どんな行動をして(DO)
・どんなものを持っている(HAVE)

を考えてみたのです。

このうちのあり方は『自分が安心感を持つこと』

そして、行動については、まず自分が患者さんに対してどんな行動(振る舞い,言葉使い)をしているか思い出してみることにしました。初めての患者さんが診察室に入ってくるところから回想してみます。

まず挨拶をして自己紹介をして、そして紹介状を手に持ちながら患者さんに今の体の状態や病気のことなどを伺い、時には手足の力の入り方やしびれなどの診察も行い、そしてこれからの治療について話を進めていきます。

その後、治療を行う方針になったら同意書にサインを頂いて外来診療が終わります。

すると

『もう少しゆっくり話した方が いいかも』
『もしかしたら、説明文をすべて話さなくてもいいかもしれない。』
『患者さんや家族の顔をしっかり見た方がいいな』
『座る位置や、体の向きはしっかりと向き合った方がいいだろうか、それとも少し斜めがいいかな。』
『一度、患者さん側の椅子に座ってみるのもいいかも。何か気づくかもしれない』

など自分の行動をあたまの中で振り返ってみるといろいろな発見があって楽しくなりました。
そしてこれらの行動を見直して理想の状態に近づけていきたいと思っているのです。さらにこれをするには少し勇気がいることですけどもいずれは患者さんや家族に自分の印象を聞いてみたいなと思うようになりました。

そして3つ目の『安心感』を与えてくれる医師が持っているものは

『安心を感じさせる場所』

と考えています。

それは自分だけでなく診療に関わるスタッフ全員が同じような想いで働くことによってできあがってくるのだろうと考えています。

そして、この『安心感』を与えてくれる医師の『BE,DO,HAVE』を意識しながら診療をしていこうと思っています。